最前線の開発者が考えるブロックチェーンの可能性 / DMM.comにインタビュー (前編)

最前線の開発者が考えるブロックチェーンの可能性 / DMM.comにインタビュー (前編)

こんにちは!ペンギン隊長のもりこです。

今回はブロックチェーン開発に取り組まれているDMM.comの加嵜さん・篠原さんにインタビューを行いました!

今回のインタビューは前半と後半の2回に分けて発信していきます。

前半にあたる本記事では、「お二人が何をきっかけにこの業界に入ったのか」、や、「ブロックチェーン業界に向いている人」などについてお尋ねしていきます!

人物紹介

加嵜長門さん(写真左から2番目)

合同会社DMM.comブロックチェーン研究室 室長/エヴァンジェリスト。ビッグデータ活用基盤の構築に携わり、SparkやSQL on Hadoopを用いた分散処理技術やブロックチェーン技術の研究開発、事業提案などを担当。共著に『試して学ぶスマートコントラクト開発』『ブロックチェーンアプリケーション開発の教科書』『ビッグデータ分析・活用のためのSQLレシピ』(マイナビ出版)、『詳解Apache Spark』(技術評論社)。

篠原航さん(写真左から3番目)

合同会社DMM.comブロックチェーン研究室テックリード。サーバサイドの設計・実装やビッグデータ基盤の構築に従事、計算リソースの効率化や継続的デリバリ、デプロイなどの開発支援に携わる。執筆書籍に『ブロックチェーンアプリケーション開発の教科書』『試して学ぶ スマートコントラクト開発』(両マイナビ出版)

インタビュアー

橋本 豪(写真左端)

東京大学工学部3年。ブロックチェーン開発サークルビットペンギン所属。留学経験があり英語でのコミュニケーションが得意。海外PJのリサーチに期待大。(Twitter:@Go37520867)

もりこ(?)

インターネット上にプログラムされた仮想的な女子大生。正体はハッシュ関数によって暗号化されており不明である。(Twitter:@ktromr)

仮想通貨が作る新しい可能性

もりこ

まず、加嵜さんにお尋ねします。加嵜さんはなぜこの業界に入ろうと思われたのですか?

加嵜さん

自分の場合は、もともと学生の頃は経済学に興味があって、貧困の問題やフェアトレードの研究に関心があったんですよね。

ただ、経済学のセンスよりはどちらかというとプログラミングの方が得意で、自分のやりたいことと得意なことのどちらを選ぶべきか考えた時に、大学では、自分の得意な分野をまず伸ばして知識を身につけて、そのスキルを最終的に自分のやりたかった貧困の解決などに役立てられたらいいなと思っていました。

大学ではずっとデータベースや情報検索の分野を専攻して、その後、DMM.comに入社してからはビッグデータ処理の基盤構築や分散処理のアプリケーション開発の仕事をしていました。

そのときに出会ったのがブロックチェーン技術です。ブロックチェーンの技術は今まで自分の携わっていた分散処理の技術と親和性が高いし、そのアプリケーションの仮想通貨は、自分たちで独自の経済圏を作れる可能性があると感じました。そこで、「今までの貨幣を使った経済では解決できなかった問題をブロックチェーンで解決できるのでは」という期待があり、入り込みました。

もりこ

「ブロックチェーンで作られる仮想通貨によって、今までの貨幣経済では解決できなかった問題が解決できる」とはどういうことですか?

加嵜さん

まず、今までの貨幣って、いろんな制約のもとで作られているんですよね。金貨とか銀貨であれば地球上に存在する金ないしは銀の量に貨幣の流通量が依存してしまうし、法定通貨だとアメリカの信用とか日本の信用といった国家の信用に依存してしまう。

国家の信用って人間にはコントロールできないことで落ちてしまう場合があるじゃないですか。例えば大地震が起きて大きな経済的損失が起きたとか。いろんな制約のもとで貨幣って作られていると思うんです。けど、それを自由なパラメータでインターネットの上に新しい通貨を作れるのが仮想通貨の技術だと思うのです。

今までの金銀を使ったものや信用を使ったものも当然作れるし、それ以外のものも作れるし、そこでいろんな挑戦ができるんじゃないかなと思ったんです。

もりこ

なるほど!ありがとうございます。

ブロックチェーンは新しい形の金融デバイス

もりこ

では、篠原さんはなぜこの領域に取り組まれていますか?

篠原さん

はじめのきっかけ自体は適当で、渋谷の会社で働いていた時の同僚にビットコインの話を延々とされて、

そうなんだ、そんなものが3万円もするんだ……!!

いらんわ。

みたいな反応でした。当時。

買っておけばよかったですね笑

もりこ・橋本

(笑)

篠原さん

そういう話がきっかけでたまに仮想通貨を買ったりしていて、値動きするのが面白いなとか思って興味を持ち始めましたね。

実際のところ、ブロックチェーン・仮想通貨って、新しい貨幣だとかいろんな言い方で形容ができると思うんですけど、新しい属性の金融デバイス、ガジェットだと思っています。それはブロックチェーンという非中央集権のP2Pのネットワークがあるから実現できたわけです。それはそれだけですごくいい属性だと思うんですけど、他にも色々おもしろいことってできると思うんですよね。

例えば、Ethereumってプログラムが書けますが、プログラムを書けると実際にブロックチェーン上で使った数値とかオブジェクトを次どうやって金融商品に組み込んでいくかということができると思います。

単純に投げ銭をしてそれで完結させるのも楽しくて良いのですが、それ以外にも、オプションなどの様々なマーケットといった、金融商品の種類は多くありますよね。担保、コラテラルの仕組みもそうですし。

さらに、プログラムが公開されていて透明性があるので、誰が隠しているわけでもなく、どの金融商品が魅力的だとか危険だといったことも分かるわけです。それはすごく可能性があるなと思っています。

分散化も1つの選択肢に

篠原さん

あと、仮想通貨は発行主体があるようでないというか。ネットワークの参加者みんなで維持しているものですよね。

昔、アントニオ・ネグリという人が書いた「帝国」という書籍があるんですけど、その本には、アメリカのような超中央集権の国の後には分散化したアメーバみたいな帝国ができると書かれているんですよね。それって、潰そうと思ってもなかなか潰せない。 

これは言い方が悪いですがテロ組織みたいですよね。テロ組織って壊滅させようとしてもなかなか難しい。それに近い「強さ」とか「しぶとさ」があるなと思って。私はもともと大学で哲学をやっていたので、そういう発想は面白いと感じますね。

そういう考え方が好きなのと、ずっとエンジニアをやっていたというのが合わさり、加嵜さんが考えているようなことも面白いなと思うので、じゃあ一緒に注力してブロックチェーンやっていきましょうという感じでやっています。

だから、別に今の中央集権をつぶしたいわけではないのですが、それに迷惑を被っている人がいるのなら、そうじゃない選択肢もあっても良いのではないかと思っています。

新しい経済の仕組みをプログラムできるブロックチェーン

加嵜さん

そういえば、僕は初めてブロックチェーンが面白いなと思ったのはNEMでした。ビットコインは最初はそこまで刺さらなかったんですよね。

NEMのPoI(※1)の仕組みを知って、経済で貢献した人がより新しい通貨をもらえるっていう再分配の仕組みや、その仕組みを数式で記述できること、しかもそれが実行されることをブロックチェーンのアーキテクチャ全体を通して保証できるというのがすごいと感じました。

これって、今の税務署で管理されている税金とは異なった新しい再分配の仕組みが作れるということじゃないですか。そういう観点からすると、再分配の仕組みがあるわけではないビットコインより、NEMの方が最初刺さりましたね。

今のほとんどの通貨は富を持っている人がより儲かりやすい資本主義の仕組みに沿っていますけど、新しく決めた仕組みをプログラムで自動化と再現を行うことによって、そうではない異なった経済が作れるということに最初すごく魅力を感じましたね。

※1 PoI = Proof of Importanceの略。NEMに実装されているコンセンサスアルゴリズム。

もりこ

なるほど!ありがとうございます。

他の仕組み、ビットコインのPoWの設計についてはどのようにお考えですか?

篠原さん

PoWに関していえば、本質的には「電力とかハードウェアという外部のものをオラクルを通してブロックチェーンに投入するっていうプロトコル」なんですよね。プロトコル設計の問題だと思っています。

プロトコルに投入するものとしては、電力じゃなくて他の別のものでも良いと思っています。ただ、電気は世界共通で広く使えるものになっているじゃないですか。テスラやエジソンをはじめとする世の中を便利にしてくださる方が貢献してくださった結果、ほとんどの国で電気は使えるものになりました。そういう意味では、公平性が担保された資源ではあるのかなって思いますね。

とはいえ、公平性を完全に見越した設計って設計当初ではできないと思います。例えば他のもの、シェールガスでお願いしますと言われても厳しい地域が出てくるし、四つ葉のクローバー発見でお願いしますって言われると団結してそのための対策を練る人たちが出てくるかなと。

PoWは、全世界に普遍的に、公平な機会で存在するような外部のパワーを入れないとブロックチェーンが健全化しない、っていう初めのサトシナカモトの試みだったと思うのです。そういう意味ではすごくうまくいっていると思うんですよね。

もちろん全てがうまくいっているわけではなく、中央集権的になってしまう部分はあると思うのですが、そこは織り込み済みだったんじゃないですかね。どうしても寡占になってしまいますからね。

加嵜さん

ビットコインが当初目指した、誰にも止められない送金の仕組みっていうのがPoWで本当に実現できるんだったら良いと思います。いまはまだいろいろ課題もありますけど……

篠原さん

やはりPoWには無駄が多いですね。非効率じゃないですか、やらなくていいことやるし。あれってそもそもスパム防止のためにできたプロトコルだし。初めはEメールだったんですよね、スパムメールを不正に送信させないために、PoWで送信可能数を制限するという。

ブロックチェーン業界に向いている人 それは◯◯◯!?

もりこ

この業界に向いている人とはどんな人だと思いますか?

篠原さん

自分から行動できる人ですね。どの業界も同じだとは思うのですが、自分から情報を取りに行かないと情報が手に入りません。一年前のEthereumのロードマップと今のロードマップでもかなり違いはありますし。

情報を自分から取りに行く人が向いていると思います。

もりこ

ほうほう。

篠原さん

…ツイ廃とかいいんじゃないですかね。

カンファレンスの様子はすぐにYoutubeにアップされるし、有識者の情報はすぐにTwitterに流れます。TwitterやYoutubeといったリアルタイムのツールを積極的に使うのが好きな人は適性があると思います。

そういう意味で、ツイ廃はいいですね。というか、ツイ廃が界隈に多くないですか?

もりこ

確かにツイ廃が多いですよね、なんなんすかね(他人事)

篠原さん

Vitalikもツイートのスピードがとても速いです。ほぼリアルタイムで更新してることがあります。

加嵜さん

向いている人の属性でいえば、今までのコンピュータサイエンスの知識はあった方がいいとは思うんですけど、今までのウェブアプリケーションやネイティブアプリケーションのトレンドを知らないとか、それに捉われない人が入ってきた方が楽しいんじゃないかと思いますね。

例えば、昔のインターネット黎明期でいえば、とりあえずホームページ作っとけばよいみたいな時代が少なからずあったんですよ。そうではなく、インターネット上にドメインをとって、こういう掲示板を作ったらこういうビジネスが生まれるみたいな発想を持った人がインターネットを上手に利用していったと思うのです。そのように、解決したい悩みや問題を持っている人の方がブロックチェーンをうまく使えると思います。

篠原さん

ブロックチェーンで何かやりたいっていう人はかなりいますが、別にブロックチェーンいらないじゃん、という議論になることもあります。ブロックチェーンの本質を分かっていて、他の分野で解決したい問題意識があれば、あとは当てはめるだけです。ですので、課題解決したい人がいいですね。

本郷に美味しい飯屋さんが増えてほしい〜!!みたいな。

もりこ

とんこつラーメンや中華料理屋さん以外もできてほしいですね(笑)

加嵜さん

他には、さっきの積極的に情報を取りに行く人に近いですが、学際的な人が良いのではないでしょうか。「ここからは自分の領域じゃない」とシャットアウトするとそこから先が分からなくなってしまいます。

自分はエンジニアだから経済学のことはわかりません、とか、数学勉強してないから暗号はわかりません、となってしまうとそこから先が進めなくなってしまいます。自分の専門性に閉じこもらず何でも学ぼうという感じの人が向いているのではないでしょうか。

篠原さん

ブロックチェーンの「経済をプログラミングできる」という特徴はいいですよね。そういう点では、本当は経済学者がやったらいいと思うんですよね。最近DeFi(※2)が流行っていますが、あれも金融工学ができる人が自分でスマートコントラクトをかけたらすごく強いと思うんですよ。僕・私が考えた新しい経済みたいな。なので、いろんな分野の人が入ってほしいですよね。

※2 DeFi = Decentralized Financeの略。分散型金融のプロジェクトの総称。

ブロックチェーンの国際性

橋本

国際性についてはどう思いますか?この国の事情を知っておいた方が良いといったことや、英語はできた方が良いといったことです。

篠原さん

本気で情報を追って行くなら英語力は必須ですね。一次情報が日本語になるまで待っていたら遅いですからね。

もりこ

そういえば、エストニアやドイツもブロックチェーンに力を入れていますよね。そういうところも興味あるんですけど、情報をとるのに苦労します。なぜこんなに情報が少ないのでしょうか。

篠原さん

私の言語の限界が世界の限界を意味する」とヴィトゲンシュタインが言っていましたけど、日頃からその世界と親身にしていないとなかなか情報が取れないと思います。エストニア料理は都内にもなかなかないですし。

アメリカの人が日本にいるとコミュニケーションを取れてアメリカの情報が手に入ると思うんですけど、まずは文化を知らないと情報に到達できないし、知っても理解が難しいのです。

もりこ

本当にその国の技術を理解しようとするならば、その国の人とコミュニケーションをし文化を理解する仕組みを日本に作って行く必要があるということでしょうか?

篠原さん

そうですね。ホップさえ作ればあとは繋がると思います。

例えば、フランスは絵を描くところ、観光に行くところっていう固定概念が入ってしまうとフランスのITには目を向けなくなってしまう。

加嵜さん

アメリカよりロシアの方が地理的にはすごい近いのに、心理的にはすごい遠いって誰かが怒っていましたね。色々繋がりがないとまずはわからないから、そういうつながりをちょっとずつ作っていかないといけないですね。

篠原さん

地道に広げていくことですね。

実はイスラム圏は相性が良いんですよね。例えばイスラエルはブロックチェーンに力を入れて取り組んでいますし、親和性も高いと思います。

コーランの教えでは、利子を取ることを禁じているのですが、そういうのが入ってくると金融の仕組みがガラッと変わってくる可能性がありますね。

もりこ

今はイスラムの中で経済圏が完結しているが、今後プログラムでそういう独自の経済圏が再現され、世界に広がっていくことで、金融業界が大きく変わる可能性があるということですか?

篠原さん

まさしく。

加嵜さん

逆に日本からそういうものを出していきたいところですけどね。日本にも特有の経済がありますからね。

まとめ

  1. 仮想通貨は自由なパラメータを基に発行できる新しい貨幣
  2. ブロックチェーンが作る透明性の高い金融商品には可能性がある
  3. 新しい経済の仕組みをプログラムできるのはブロックチェーンの魅力
  4. ブロックチェーンに向いている人はツイ廃
  5. 革新的なモデルはどこから出るか分からない、国際的に目を向けていこう

後半に続きます!後半では、DMM.comが取り組まれていることや、そのヴィジョンについて尋ねていきます!

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